1999/04/13 天浪検疫所犬舎での生活(2)

on 1999-04-13 | Tags: 動物検疫, 成田空港

前回に引き続き、Amieと私の天浪検疫所の犬舎での生活のこと、それから晴れて検疫をパスして出所した時のことについて書こうと思う。

まずは、私達の検疫所生活の続きから。

検疫所の犬舎にはおもちゃを持ち込んでも良いのだけれど、帰国時に大きなおもちゃは置いて来ちゃった私達、検疫初日は時間を持て余していた。 検疫所構内で偶然Amieがテニスボールを見つけたのはそんな時。 それ以来、Amieは外に出ると真っ先にそのボールを探しにいくようになり、ボール取りが私達のお気に入りの遊びとなった。

以前このページのどこかで書いたことがあるけど、Amieはサッカーボールを追いかけるのが大好きで、小さいボールや木ぎれなど何かをくわえて持ってくるというレトリバー種本来の性質がちょっと弱いところがあった。 でも、サッカーボールもフリスビーもない此処では、テニスボールを追いかけてくわえてくるのが楽しくてしょうがないようだ。

毎日ボール取りをするうち、ふと私は考えた。 今度の週末に、家族に頼んでサッカーボールを持ってきて貰おうと思ったけれど、ひょっとしたら、このままボール取りを続けた方が良いのかも知れない。 これはレトリバーの血を呼び覚ます良い機会だろう。 しかも、この構内は、気を散らすような物も落ちていないし、犬のマーキングもそんなに多くないので集中して遊ぶにはもってこいだ。

折角生後6ヶ月の頃から半年間訓練したのに、イタリアへ行っている間、ちょっと甘やかし気味で、Amieの「たが」が外れかけているのも気になっていたので、遊びながらAmieの苦手なDown(フセ)の練習もしちゃおうと欲張ってみた。 Downさせて、ボールを見せびらかしておいてからピュッっと投げる、すると、Amieダッシュで追いかけてボールをくわえて嬉しくて仕方ない表情で戻ってくる。

普段だと、Downと命令すると、Amieは「なんか美味しいもの持ってんの?」って探るような目をしながらDownに入るような所があったのだが、まぁ、素直にチャッとDownすること。 コレよ、コレ、大成功! 制限された状況っていうのもたまには必要なのねぇ。 私ってばぬいぐるみだ、サッカーボールだと、Amieに与えすぎてたのかもしれないなぁ。 ちょっと反省 (_ _ )/。

でも検疫所が訓練に良い場所だったなんて意外や意外。 こうして退屈なだけだった係留検査期間は、トレーニング強化合宿(?!)と化し、ルールが出来てボール取りも面白さを増してきた。 これしか遊びがないもんだから、なるべく飽きないように短時間でとっとと切り上げるようにして、そのかわり1日に何回も遊んでやるようにすると、私にとっても良いリフレッシュになって一石二鳥なんである(何しろ此処の生活は単調だから!!)。

こうやってAmieと遊ぶ時は、他の犬に悪い気がして、なるべく犬舎から外れたところでするようにしているんだけれど、その行き帰りに犬舎の前を通る時に面白いことが起こる。

デカさでは第1犬舎一を誇る土佐犬がAmieを見て立ち上がり、「ウゥーーーォ」と地獄からはい上がってきたような声を出す。 (土佐犬ってホント、デカイんだよ、特に顔が!犬舎にはグレートデンもいるんだけど、土佐に較べるとグレートデンが小さく見えるんだよ)。 それを聞いて、3つ隣のロットワイラーっていうドイツあたりで軍用犬に使われるような犬が、これまたコワイ声を出すんだな~。 で、結局最後はAmieのことなんて忘れちゃってその2匹同士で「てめぇ、なんか文句あんのかー」って睨み合ってるの。 コワーイ (^_^;)... 2匹とも人間に対しては穏やからしいんだけれどね。

この2頭だけじゃなく、犬舎には本当に様々な国からやって来た、大小様々な犬種を見ることができて、これがこの犬舎に通うもう一つの楽しみになっている。

家庭犬も多いけれど、ブリーダーさんが輸入した犬や、海外のショーでハクをつけて帰ってきた犬もいて、前述の土佐犬、ロットワイラーの他には、シャーペイのカップル、グレートデン、ボクサー、イングリッシュ・セッター、セントバーナードにアフガンハウンド、白いマスチフみたいなドコ・アルヘンティーノの子犬、ミニチュア・シュナウザーにエアデール・テリア、顔付きはシェパードで体色が褐色のミックス犬etc....もちろんラブやトイ・プードル、ミニチュア・ダックス等おなじみの犬種もいる。

出身国も、欧米諸国は云うに及ばず、韓国、中国、マレーシアetc....アフリカのマラウィーから来たという背に「たてがみ」のある犬の飼い主さんに会った時は、思わず質問攻めにしてしまった。

ところで、「毎日犬舎に通っているの」と友達に言うと、大抵「何処に泊まっているの?」という質問が返ってくる。
お答えします。毎晩、車中泊でーす!
何故って、自宅から通える距離じゃないし、金欠の私に15日間ホテル代が払えるはずがありませんもの。 でも、ちゃんと夜間の停車場所には気をつけているし、お風呂だって入っているし、洗濯もして清潔なものを着ているから、ママあんまり心配しないでね。

清潔で文化的な(?!)車中泊生活の秘訣は、成田市内にある健康センター。 お風呂はもちろん、コインランドリー、休憩室、TV、新聞、パソコン接続可能なグレーの電話というように、必要なモノは何でもある。 タオルも石鹸・シャンプーも、歯ブラシまで揃っていて、常夏の世界だし...ちょっとイメージがオヤジくさいのさえ気にしなければ、私のようなにわか「家なき子」にはまさしくパラダイス!4回利用すれば元が取れると言われて、初日に会員証まで作ってしまったので、料金もお安めの1260円。 (でも、センターの人は、2日にいっぺん通ってきては時間ぎりぎりまで居て、途中電話の前に座り込んで長々とパソコンをいじる私のことを、どういう人なんだろう?って不審に思っているに違いない。)

肝心の寝場所の方だが、私のジムニーの荷台は、Amieのケージを積むために、タイヤハウスの高さで全面板張りにしてある。 今はケージを降ろしてあるので、ここで寝袋にくるまって寝る。 何しろ大昔の軽四で幅が狭いから、チビの私が足を折り畳んでやっと寝られる広さだが、慣れると結構熟睡できて、2週間経った今でも疲れを感じず快調そのもの、毎朝6時前になるとピッと眼が覚める。

1回だけ健康センターの仮眠室で寝たことがあるんだけれど、隣の人のいびきだの、中途半端に柔らかいマットのおかげで、かえって翌日疲れて、お金を余分に払ってこれなら、車の方がずっと静かで良いと、それ以来懲りた程だ。

でも、Amieが私の所にやってきて以来、彼女と離れて生活したことのほとんどない私は、検疫開始直後、毎朝車の中で眼が覚めると、そこにAmieがいたら恐らくするであろう物音や啼き声が聞こえるような気がして、慣れるまでしばらくかかって困った。

さてさて、今日は4月12日。 明日はいよいよ出所の日なのである。 私達が日本に到着した時、咲き初めだった桜の花も、ちらちらと散りだしてから数日経つ。 2日続いた雨が上がり、強めの、しかし暖かい春の風に舞う桜吹雪の中で、私は構内のベンチに座ってぼんやり飛行機の発着を眺めている。 手に持つロングリードの先っぽではAmieがさっきから夢中で花びらを追いかけている。

過ぎてみれば何だかあっという間の2週間だった。 ここでこうして毎日毎日、目の前からひっきりなしに飛び立つ飛行機の後ろ姿を見送りながら、この次Amieと再びミラノに向けて飛び立つ日のことを夢見ていた。 私にもAmieにもとても良くしてくれたスタッフの皆さんや、私が「明日で終わりだよ」と言った時に「良かったなぁ、家に帰れるなぁ」と喜んでくれた検問ゲートの警官のおじさんとも明日でお別れかと思うと、かなり淋しい。

そういえば検疫期間中のある日、いつものように犬の健康チェックに来た検疫官の1人が、私にこう聞いたことがある。 「たった3ヶ月の滞在だったのなら、日本に置いていった方が犬のためだったんじゃない?」

確かに1週間や10日の旅ならそういう選択もあったかもしれない。 でも、私の考えでは、今回Amieを3ヶ月の間私から離れて独りでどこかに預けたとしたら、たった2週間此処に居ることより、遥かに彼女にとってつらい経験だったろうと思うし、さらには、Amie自身イタリアで色んな経験を楽しんだのは確かで、それが臆病で内気な彼女の成長にきっと役立っていると信じているからだ。(結果的には経済的にも大きな違いはなかったし...)

それにこの際だから本音を言っちゃえば、私自身にとって、3ヶ月Amieと一緒だったから慣れないミラノ生活も旅も楽しかったし(苦労もあったが...)、独りぼっちでは耐えられなかったわよー!!

検疫はある意味ではつらいことだし、避けて通れるならその方が楽に決まってる。 けれど、ま、滅多に経験できない風変わりな旅・イタリア留学のオマケ・日本の匂いに慣れるためのワンクッションと考えればなんてことない。

いずれにしても、コレがちょっとでも楽しいと感じられるのは、飼い主・犬とも一緒にいられたからで(>Amie、そうでしょ?)、この意味で、Amieのために2週間毎日通うだけの時間と、家族の全面バックアップが得られた現在の私は、たとえ金欠で毎晩寝袋で車中泊だとしても(これはこれで面白かったけど)、超ラッキーガール・最高の贅沢者だったかもしれない。

...ハッ、つい熱くなってしまった (^0^;)。
おセンチくさい文章が鼻についたら、お許しくださいましネ!

さて、明けて13日、出所の日。
今日出所予定の犬が十数頭いるとかでスタッフの準備も忙しそう(note参照)。 でも、私達はスタッフの方が書類を貰ってきてくれるのを待っていれば良いだけなので、いつものように朝が始まった。 午前11時前に書類が届く。 諸経費の支払いを済ませ、記念にとスタッフと一緒に写真を1枚撮って、スタッフに「Amie、元気でね」と見送られつつAmieと犬舎を出る。 ちょっと卒業式が終わって解放された時の気分。桜の花のせいかな?

note: 通常は空港ターミナル内の検疫所で、「輸入証明書」の発行と共に犬の引き渡しが行われるので、そこまでスタッフが犬を輸送しなくてはいけないため。
Amieは自己管理なので、犬舎引き渡しの方が都合が良かろうということで、スタッフが向こうから書類を貰ってきてくれることになっていた。

記事本文おわり